遺言とは

 「人の生前の意思表示に、その人の死後、法律的な効果をあたえて、実現をはかる制度である」

 遺言書をつくっておいたために遺産に関する紛争が防げた。もし遺言があったなら、こういう醜い争いはせずにすんだであろう、というケースは少なくありません。相続人は、被相続人の遺志を尊重しようとするものであるし、また、法律的効力のあるかぎり、従わなければならないものであるから、遺言によって相続人の間に平和を保つことができます。

 わが国の相続法の基本は均分相続制です。長男だからといって有利な取り扱いはされません。子は、配偶者の相続分の残り1/2を、数に応じて平等に相続します。

 遺言がない場合、相続人の協議が整えば、遺産をどのように分割しても問題ありません。協議が整わなければ、ほぼ法定相続分に従って分割するしかありませんが、この過程で紛争が生じることが少なくないようです。

 

子供のいない夫婦

 子供がいない遺産相続の場合、もめることが多いです。

 父母はすでに死亡している場合が多いので、亡夫(婦)のきょうだいとの争いになりがちです。とかく、ふだん付き合いの悪いきょうだいほど過酷な要求をしがちで、遺言がないと、泣く泣く残された土地建物を売って、その代金を分けるしかなくなります。

 こんな場合に、全財産を妻(夫)に相続させる趣旨の遺言があれば、ほとんど問題は解決されます。兄弟姉妹に遺留分はないので、遺言は完全に効力を発揮します。

 

再婚した夫婦

 妻に先立たれた夫の再婚に子供が反対することが多いのは、母親でもない人に、将来遺産の半分も相続されたのでは、おもしろくないというわけです。父親が生きている間は遠慮していても、死とともに先妻の子との対立がはっきりしてきたりします。夫たるもの、せっかく再婚したのだから、キチンと相続分を遺言で決めておくべきではないでしょうか。一緒になって攻めてくる先妻の子らに抗しきれず、きわめて不当な遺産分割を強いられてしまうケースもあるようです。

 

何歳になったら遺言できるのか

 20歳未満の未成年者が財産に関する行為をするには親権者の同意が必要です。しかし遺言ではこの制限をとりのぞき、遺言できる年齢を満15歳と定めました。

 

遺言の方式

 民法の定める遺言の方式には、普通方式と特別方式があります。

 普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。

 特別方式というのは、死亡が危急に迫っている場合や、遺言者が一般社会と隔絶した場所にいるという理由で、普通方式による遺言ができない場合の便法です。便法ですので、遺言者がその後も生きて、普通方式によって遺言ができるようになってから6か月生存していた時は、その効力が失われます。

 

自筆証書遺言

 自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付および氏名を自書し、押印して作る遺言書です。

 証人や立会人も不要で、自分だけで作ってこれを秘密にしておくことができる点でもっとも簡便につくれる遺言です。

 長所の反面、短所もあります。遺言書が生前に人に見つかってしまうのはまだしものこととして、紛失したり、死後に発見されても隠されたり、また破られたりする心配があります。

 自筆証書の遺言は、日付の記載も自書されなければなりません。日付印を押しただけのものは無効とされます。日付の記載によって遺言書成立の時期が明確にされるわけです。日付の記載は2通以上の遺言書が出てきたときに大きな意味を持ってきます。

 

公正証書遺言

 公正証書遺言というのは、遺言者が、公証人と証人2人以上の立会いのうえで、口頭で述べた内容を公証人が公正証書として作成する遺言です。

 公正証書の原本が公証人役場に保存されているので、紛失したり、また偽造、変造、滅失、破損というような心配がありません。また、公証人が作成するものであるから、文字の不鮮明、方式の不備、趣旨不明ということもありません。

 ただ、2人以上の証人を必要とすることなどのために、遺言の内容を秘密にしておくことはできません。また公証人に作成を依頼するわけなので、わずらわしい思いをする向きもあるかもしれません。また、手数料もかかります。

 しかし、財産処分や身分関係の処理は、可能なかぎり安全確実な方法をとるのが望ましいといえます。公正証書遺言は大いに活用されるべきです。

 

遺言書が見つかったときどうするか

 遺言は、故人の最終意思を述べたものであり、その内容いかんによっては、遺言を受け継ぐ者の身分や財産関係に大きな影響を与えます。しかも法律は、この遺言の内容を法律的に保護して、これを尊重しています。

 そこで遺言が発見された場合には、その取扱いについて民法が定めています。遺言書を発見した人は、その規定にしたがわなければなりません。

 

開封・検認

 遺言書が発見された場合、開封と検認の手続きをとらなければなりません。それは、遺言者の遺志を明確にするとともに、遺言書の偽造や変造を防止するためです。封印のある遺言書は、必ず家庭裁判所に持参して、相続人やその代理人立会いのうえで開封しなければなりません。

 公正証書による遺言書を除き、遺言書の保管者、または保管者がいない場合には相続人が、遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。この手続きをしないで、相続人とか遺言書の保管者が勝手に開封すると、過料に処せられます。

 

 

大学卒業後、名古屋市内の司法書士事務所での18年間の勤務を経て、平成24年3月わきや司法書士事務所を開設。
  

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司法書士 脇谷 哲