法定相続人

 人が死亡した場合に、誰が相続人になるかは民法で決められています。法律が、定めている相続人は、死んだ人の配偶者、つまり正式に結婚した夫または妻と、死んだ人と一定の血族関係にあった者です。

 相続人になる資格のある血族関係者は、子・孫・ひ孫など(直系卑属といいます)、父母・祖父母など(直系尊属といいます)、兄弟姉妹です。おじ、おばは相続人となることはありません。

 

配偶者の相続権

 配偶者は、常に相続人になります。この場合の配偶者とは、法律上の婚姻届を出した者のことで、そこまでいっていない内縁関係にとどまる夫や妻には相続人となる資格はありません。法律上の夫婦であればよいので、お互い愛していようといまいと関係ありません。長年別居生活を続けていても、法律上の夫婦であれば相続権は認められます。

 

法定相続人・第1順位

 法定相続人の地位は、法律で順位まで決められています。なぜ順位を決めておくかというと、法律で予定している法定相続人が相続開始前に先に死亡した場合、「その人の代わりに誰が相続人になるのか」の問題が起こるからです。

 血族関係者のなかでは、子が第1順位で相続人になります。第1順位で相続人になるということは、子だけが相続人となり、被相続人に親がいても、また兄弟姉妹があっても、この人たちはまったく相続人にならないということです。

 第1順位で相続人になれる子は、母親が“腹を痛めた”夫婦の間に生まれた子のほかに、養子も含まれます。養子は、生理的には存在しない血族の関係を、法律上の1つのフィクションによって承認した血族関係なので、法定血族と呼ばれます。法律的につくられた親子関係というわけです。

 

胎児にも相続権はある

 夫が死亡したとき、妻が妊娠していたとします。そのお腹のなかの子は相続人となれるでしょうか?

 「まだ生まれていないのだから……」と相続権を認めないことを原則とすると、たとえば父の死後、翌日生まれたとしても、もっと極端にいえば1時間後に生まれても相続権がないことになり不合理です。そこで民法は「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」(886条)ことにしました。

 

夫婦でない男女の子ども

 婚姻関係にない男女の間に生まれた子であっても、子には変わりはありませんから、父または母が死んだ場合には、その相続人になります。 

 婚姻届を出していない男女の間に生まれた子を、法律では「非嫡出子」または「嫡出でない子」といいますが、この子と母の関係は出生届によってはっきりします。

 父との関係では、父がはっきりしているからといって相続できるわけではなく、戸籍上の父の認知の届があってはじめて相続人になります。なお、認知は遺言によってもできます。生きている間は、世間体などから認知を拒んでいても、遺言でこっそり、「お前が自分の子だということは、俺は最初から認めていたぞ」といえるわけです。

 

法定相続人・第2順位

 被相続人の血族関係者のなかに子が1人もいない場合には、第2順位として、父母や祖父母などの直系尊属が相続人になります。

 直系尊属の場合は、「親等」の異なる者の間では、その近い者が相続人になります。つまり親が1人でもいれば、祖父母には相続権はいきません。親がいないときにはじめて祖父母へ相続権が移ります。

 

法定相続人・第3順位

 直系尊属も直系卑属もいないときにはじめて、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

 

代襲相続

 親よりも先に子が死亡した場合、孫の相続権はどうなるんでしょうか。もし親に他に子がいたとすれば、親と子は1親等、孫は2親等ですので、法定順位の考え方からすると孫は相続できないことになります。同じことは、兄弟姉妹間の相続の場合にもあてはまります。

 このような不公平な、人情に反することは、もともと法律の趣旨にそぐわないものです。そこで民法では、この孫や、甥姪たちをその親の身代わりとして、その者たちにとってのおじやおばと同格で相続させることにしました。これを「代襲相続」といいます。

 

代襲相続者の資格

 直系卑属による代襲相続の場合、代襲相続をする者は相続人の子であると同時に、被相続人の直系卑属でなければなりません。したがって、相続人が養子である場合には、養子の子のうち、養子縁組以前に生まれた子は代襲相続から除外されることになります。

 代襲相続によって代襲者は、相続人の親等にまで遡って、いわば「身代わり」として相続することになります。つまり、孫が子を代襲する場合は、被相続人の1親等の子として相続することになります。

 直系卑属による代襲相続人についてさらに代襲原因が発生すれば、その代襲相続人の子がさらに代襲相続人になります。このような相続を「再代襲相続」といいます。

 ただし、兄弟姉妹の相続の場合の代襲相続は、従来は直系卑属による相続の場合と同様に無制限とされていましたが、昭和56年1月の改正民法施行から、その子(被相続人の甥または姪)の1代にかぎるものとされました。

 

大学卒業後、名古屋市内の司法書士事務所での18年間の勤務を経て、平成24年3月わきや司法書士事務所を開設。
  

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司法書士 脇谷 哲